IPO実務検定試験はマニアックすぎるが故、
試験を知らない人や攻略法に関する記事がググっても少なかったため
今回受験して合格してきたので記事にしてみました。
IPO実務検定(標準)というマニアックな試験を受けてきました
IPO実務検定(標準)とは
IPO実務検定協会が主催する検定試験となります。
以下、試験概要~
上場するためには、監査法人による会計監査や、証券会社による引受審査、証券取引所による上場審査などにパスしなければなりません。その過程では、膨大な上場申請書類を作成したり、証券会社の審査部からの質問に対して限られた時間の中で回答しなければならないなど、上場準備特有のスキルが求められます。
IPO実務検定協会HPより引用
しかしながら、上場準備のスキルを身につけることができる場所は、上場準備企業や監査法人の株式公開支援部、証券会社の公開引受部・審査部などに限られており、上場準備は、その詳細を学びたくても学ぶことができない分野の一つとなっています。このため、上場準備スタッフは構造的に不足しがちであり、これにより上場が延期になったり、最悪のケースでは、上場そのものをあきらめざるを得ない企業もみられます。
IPO実務検定は、このような事態を回避・解消するため、上場準備に関する専門知識を持ち、上場準備を企業内部から支えることができる人材を早期に育成するべく創設された試験です。
そして、IPO実務検定は2種類あります。
今回わたしが受験したのは標準レベルです。
区分 | 合格者が有すると認められる能力 |
標準レベル試験 | 上場準備スタッフとして、上場準備室長のサポート的な業務をこなすことができる。 |
上級レベル試験 | 上場準備室長として、上場準備に必要な業務の特定ができるほか、それらの業務を社内の各部門や担当者にアサインしたり、監査法人、証券会社などの上場関連プレイヤーとの折衝ができる。 |
IPO実務検定の試験範囲はこちら~
標準レベル
試験科目:「倫理・社会的責任」「制度・コンプライアンス」「上場準備実務」出題範囲:下表参照
出題方式:択一式(60問)
上級レベル
試験科目:「制度・コンプライアンス」「上場準備実務」出題範囲:下表参照
出題方式:択一式(60問)および記述式(3問)
試験科目 | 項目 | 標準試験の主な 出題内容 | |
倫理・社会的責任 | 経営者や実務担当者が持つべき倫理、ガバナンスと企業価値 | ||
制度・コンプライアンス | 上場の意義、 メリット・デメリット | 上場の定義・意義、メリット、デメリット | |
市場の種類 | 新興企業向け市場を中心に証券市場の種類 | ||
市場別上場審査基準等★ | 各市場毎の形式基準、実質基準 | 子会社上場基準、市場別上場廃止基準 | |
プレイヤー | 上場をサポートするプレイヤーの役割 | ||
会社法概論★ | 機関、株主の権利、株式を中心とした会社法の基本的知識 | 定款、種類株式、登記を中心とした会社法の基本的知識 | |
金融商品取引法概論 | 上場という観点を中心とした金融商品取引法に関する基本的知識 | インサイダー取引規制 | |
コンプライアンス | 人事・労務に関する法令等の概要★ | 人事・労務に関する法令等の知識★、知的財産に関する法令等の基本的知識★、税務に関する基本的知識、公益通報者保護法、個人情報保護法、産業廃棄物処理法、下請法、景品表示法★等その他の法令の基本的知識 | |
上場準備実務 | 上場準備のスケジュール | 上場に向けてのスケジュールとプレイヤーとの関係、資本政策や管理体制整備のスケジュール | |
戦略とリスク | - | 戦略とリスク(リスク対応及び開示)についての基本的知識 | |
コーポレート・ガバナンス | コーポレートガバナンス・コード★、機関設計、組織的経営、三様監査総論、反社会的勢力との関係遮断 | 報酬、三様監査、IR、利害関係者に対する施策、関連当事者等との取引や関係会社の整理 | |
内部管理体制 | 内部統制システムの構築、内部統制報告制度の概要、業務プロセス、中期経営計画や予算管理 | 財務報告に係る内部統制の評価 | |
ディスクロージャー | 財務諸表のつながり | 招集通知、決算スケジュール、事業報告、有価証券報告書、有価証券届出書★、目論見書、内部統制報告書、四半期報告書、貸借対照表・損益計算書項目等の主な論点 | |
証券会社対応 | - | 引受審査までの流れ、引受審査資料 | |
証券取引所対応 | 上場までの流れ、取引所審査 | Ⅰの部、JASDAQ上場申請レポート、一部指定・市場変更★ | |
資本政策 | 資本政策立案時の注意点、各手段の特徴 | 資本政策と企業価値把握、ストック・オプション |
試験要領など~
試験方式:CBT(Computer Based Testing)方式であり、試験会場のパソコンで受験します。
標準レベルはすべての問題は選択式です。
なのでパソコンスキルは要求されません。
試験合格ラインは標準レベルと上級レベルともに70%以上の正当率となります。
試験時間は、標準レベルが60分、上級レベルが90分となります。
また標準レベルは受験後にすぐに合否の結果がわかります。
上級は記述があるので試験当日には合否はわかりません。
また以下受験料です。高い!!
標準レベル試験 11,400円(税抜) ※税込 12,540円
上級レベル試験 19,000円(税抜) ※税込 20,900円
試験日、会場など
試験日ですが、一定の試験日は定まっておらず
試験会場の営業時間内であれば受験者は自由に受験日と受験時間を選択することができます。
試験会場は全国にいくつかあるので、受験生の近所の場所を選択することになります。
受験して感じたIPO実務検定(標準)の難易度
わたしの場合ですと
興味本位で受験してきたのですが、
標準レベルなら楽勝とおもっていましたが、受験時は思った以上に苦戦しました(笑)
理由としては、受験の準備期間が5日という個人的理由と
標準レベルの選択問題の方式で、誤っている個数や正しい個数などの「個数」を選択する問題が多く出題されているためです。
たとえば、5つの肢から正しい肢を1つ選べという問題なら簡単ですが、
「個数」を選択する問題となるとすべての肢について正しい理解がないと判定できないため
難易度もあがることになりますよね。
そういう問題がちらほらと出題されるため、標準レベルといえど難しいと感じました。
また試験範囲のうちのコーポレートガバナンス、内部統制管理、ディスクロージャーあたりは
公認会計士試験合格者であれば受験時に学習した知識を思い出せれば余裕ですが
会計士試験の受験経験が無い人だと一気に難易度が上がるな、と感じました。
他方で、会計士試験合格者の方は、コーポレートガバナンス、内部統制管理、ディスクロージャー以外の試験範囲を抑えれば点数を稼げるため、会計士の方であれば合格難易度はそこまで高くないと感じます。
ちなみに以下、ぎりぎりで合格しました。75%でした。
こんな感じで標準レベルだと受験後にすぐに結果がわかります。
標準レベルといえど、合格はうれしいものですね。
使用した教材
使用した教材はこちらを1回転したのみです。
2800円ほど。
※会計士の方が受験されるならこちらのテキスト1冊で十分かとおもいます。
ただし、会計士ではない方や「上級レベル」も今後受験予定の方は以下のテキストで学習した方が効率的とおもいます。
こちらは5800円ほど。IPO実務検定試験範囲をすべて網羅しており、
テキスト自体かなり分厚いです。
ただ、こちらを読んでいるだけでIPO実務知識がかなり身につきます。
IPO実務に携わる人すべてにお勧めしたいと感じました。
上記の公式テストでインプットしたらこちらの問題集でアウトプットするのが効率的な学習になるとおもいます。
ただし、一部会計基準の記載が更新されていない箇所がありそこが気になりました。
標準レベルを合格して感じたメリットとデメリット
メリット
・実務の細かい知識を見つけることができる
・合格することで一応、IPO実務者としてのレベルに達したものと他人にいえる
・標準レベルといえど、合格するとすこしIPOに自信がつく
デメリット
・受験料が高すぎる(笑)
・たまに試験問題でテキストに書いていない問題も出題される。
受験をした方がいい人とは
監査法人のスタッフにおすすめします。
IPOの部門を志望するスタッフが毎年一定数いますよね。
上場準備会社の監査をやりつつ、こちらの検定を利用してIPO知識を身に着けることで
より実務家としてのレベルアップが見込めるのではないでしょうか。
わたしも来年あたりに「上級レベル」を受験してみたいとおもいます。
合格したらまた記事にしていきます~
では